科学研究費補助金 基盤研究(C) 文化財科学・博物館学 研究課題番号:25350395

平成24年より日出支部では大分県速見郡日出町の妙光寺が所蔵する義白上人墨書屏風六曲一双と半隻の解体、修復作業を通して地域の歴史の知識を深めている。

六曲一双と半隻のうち、比較的良い仕立てをしていた半隻は國學院大學の博物館実習において解体、クリーニング作業をした。屏風の下張り文書は鎌形氏の協力のもと大学院生と整理し、屏風全体の修復を行い妙光寺に返却した。返却した屏風は大晦日に本堂に飾られ、多くの参拝者に見ていただくことができた。

現在は残りの一双の解体を日出町で個人塾を営む笠崎まゆ氏とその塾生である中高生、その他古文書や歴史に興味を持つ方等で集まり行っている。

屏風野中1

 

 

 

 

 

 

解体した屏風の下張りには日出町で行われた富籤の仕法や番号ごとの購入者の記録、日出藩士の借り入れの記録、薬の包み紙など江戸時代の日出の人々の生活が垣間見られるものが多数あった。これまで日出藩や木下家については日出町誌等に書かれているため知識として持っていたが、藩以外の人々の暮らしぶりがわかる資料は珍しく、日出の歴史を考える上で貴重なものである。

これらの古文書をまず整理し、数点だけ翻刻を行い、その内容について5月に鎌形氏に解説をしてもらい、日出支部のメンバー同士理解を深めた。現在は各自気になった点を調べている。活動を通して中高生のメンバーは古いものを大切にすることを学んだと感想を述べており、その他のメンバーは地域に残る風習やお祭りと今回の古文書、江戸時代の風習との共通点等を発見し、ますます地域の歴史に興味を持ったようである。

野中2

今後は引き続き屏風の解体、古文書の整理を行うとともに、調査した成果を発表するべくまとめていきたいと考えている。また、屏風の文字を書いた義白上人は日出藩家老も務めた儒学、理学者である帆足万里の友人であることがわかり、帆足万里についての調査も今後の課題としている。