科学研究費補助金 基盤研究(C) 文化財科学・博物館学 研究課題番号:25350395

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本研究に置ける学術的特色は、建築史学・歴史学・考古学・文化財学・博物館学の各分野にわたる複合性にある。大蔵を建築史学的観点からのみで評価を加えるだけでなく、大蔵を有したS家そのものを文化財学・歴史学的観点から、さらに陶磁器などの資料を考古学的に分析、さらにその活用について博物館学的観点から総合的に解釈する事にある。言うまでもなく町並みは表面的には個々の歴史的建造物の集合体であるが、その一つ一つについて見てみると、それぞれの家には個々の歴史がある。地域に残る歴史的建造物を保全するということは、現今における表面上の問題ではなく、同所において来脈々と構築されて来た歴史的背景とともに後世に伝える事(町並みを形成する人々の生活を記録化すること)がより重要な点であると考える。時代が進めば進むほど正しい歴史の究明は困難となるのである。そういった意味からしても複合的、横断的手法による一刻も早い記録が必要なのである。まさにこれが、本研究の独創性といえる。
予想される成果としては、近世以来水運によって繁栄した佐原という町を構成した商家S家に伝存する大蔵の総合的な歴史的評価が期待できる事と当該地域における新たな歴史的事実の蓄積、活用という意味では、地域史にとってより重要な意味を持ち、ひいては観光資源かにつながるものと確信している。